ユニバーサルスタジオジャパンがV字回復を成し遂げたということをご存知の方も多いのではないでしょうか?
実はV字回復に導いた仕掛け人が存在しています。。。
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USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?
今回はUSJの大逆転戦略の全様とこれからの姿を「USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?」から読み解いていきましょう。
この書籍を読んで、私は驚愕しました。
この書籍に書かれていたUSJの戦略から学ぶことは非常に多いです。
私のようにDRMをやっている人からしても気づかされること、行かせることは多いなという印象でした。
ちなみに、この書籍を書いたのは、今回のUSJのV字回復の仕掛け人本人であるUSJのCMO(チーフマーケティングオフィサー)の森岡毅氏です。(2017年に退職されています)
まずは、簡単に森岡氏のことを紹介します。
その後にUSJの戦略について順を追って説明していきますね。
森岡毅って誰?
もりおか・つよし●1972年生まれ。神戸大学経営学部卒。96年、P&G入社。日本ヴィダルサスーン、北米パンテーンのブランドマネージャー、ヘアケアカテゴリー・アソシエイトマーケティングディレクター、ウエラジャパン副代表などを経て、2010年にユー・エス・ジェイ入社。革新的なアイディアを次々投入し、窮地にあったユニバーサル・スタジオ・ジャパンをV字回復させる。12年より同社チーフ・マーケティング・オフィサー、執行役員、本部長。
この経歴を見ると、輝かしい経歴を持っているやり手マーケターという印象を受けますね。
そんな人だから「人の考えを読み」「世間の流行を的確にキャッチできるのか!」と
思っていましたが、どうやらそうでないようです。
書籍にも書かれていますが、「人の気持ちがまったくわからない」というのは意外にも本人の談。
わからないからこそ、何が流行っていて何が人気なのかということを徹底的に調査し、自分で体験してみるのだとか。
前職の時代には、似合わないということを自分でもわかっていながら、髪の毛を真っ赤に染めていた
こともあったそう。
この姿勢はUSJに来てからも変わっていないとのことで、仕事のときだけではなく、休みの日であっても、入場料を支払ってUSJに入り、お客さんの視点から自分のパークを見るのだそうですよ・・・。
USJの成功戦略
USJの戦略の一番の肝といえるのは、圧倒的な選択と集中なのかもしれません。
以下インタビューからの抜粋です。
ハリー・ポッターのプロジェクトを押し出しつつ、そこに大きく投資しながらも、わずかな投資で集客を伸ばし続けなければいけない3年間は、非常に厳しい道のりでした。
ハリーポッターに450億円を投資するために、3年間をほぼ設備投資なしで乗り切るという戦略を展開。
無論CEOをはじめ、全ての関係者から大反対を食らったそうですが、ふたを開けてみれば大成功を収めました。
ではほぼ投資なしで3年間の間には何をしたのか?というと、今あるものを使って何が出来るのかを徹底的に考え抜いたということになります。
これまでにあったアトラクションの再活用や、ジェットコースターをこれまでと逆に走らせるなど興味深い戦略の数々がありました。
一つずつ説明したいのですが、長くなってしまうので、詳細は書籍をご覧ください。
間違ったこだわりを捨てさせる
もしかしたら、今でもUSJのことを「映画に特化したテーマパーク」という風に考えている方もいらっしゃるかも知れません。
確かにそれは正しかった・・・のですが、実は今は違います。
以下、本人のインタビューより。
会議で『映画の専門店』という妄想から脱却して、『世界最高のエンターテイメントを集めたセレクトショップ』にシフトしようと発言した後の重い空気は今でも忘れられません。私という宇宙人に襲撃されて言葉を失った人類、といった構図でした。
『USJは映画だけのテーマパークであるべき』『大人向けのテーマパークであるべき』という考え方も、方向性の間違ったこだわりの例でしょう。これらの行為が厄介なのは、悪意がなく、正しい行為と信じられているところ。私たちマーケターの役目は、彼らの努力が徒労に終わらぬよう、消費者価値の向上に正しくシフトさせることなのです。
自分の組織の常識を変えさせるためには、「外からの刺激が一番だ」ということは、
きっと森岡氏が一番よくわかっていたのではないでしょうか?
だからこそ、この役目を買って出たようにも思われます。
「自分たちがこれから成長を続けていくためには間違った考えから脱却しなければいけない!」この言葉は胸に響きました。
そしてこちらは書籍より、
映画が大好きで大好きで、USJにも何度も行きたくなる・・・。もしそんな私のような映画ラブな消費者が「十分な人数」マーケットに存在するのであれば「映画だけ」のパークも戦略の一つのオプションとなります。
しかし、実際の世の中はそうはなっていないんですね。
(中略)
私は「映画だけ」にこだわるブランド戦略は、不要であり、かつ非効率であると判断しました。世界最高のエンターテインメントは映画だけではありません。
(中略)
映画はすばらしい感動をくれますが、すばらしく感動するのは映画だけではないのです。
そこで私は、映画というフォーマットにこだわってブランドを作るのではなく、エンターテイメントの原点である「感動」にこだわってブランドを作りたいと考えたのです。
このパークを、「映画の専門店」ではなく、映画も含めて「最高の感動を届けるブランドを世界中から集めたセレクトショップ」にしたいと考えるようになりました。
「映画のテーマパーク」では、収益を確保するのに十分なマーケットではないという判断をした森岡氏は映画の専門店からの脱却を図ります。
このときに周囲になんと言われたのかということは、ここであらためて語る必要はないでしょう。人間は基本的に現状を変えることを嫌がる生き物ですから・・・。
「感動を届けるブランドのセレクトショップ」という新しい戦略の元、人気ゲームのモンスターハンターとのコラボ、これまで園内でひっそりと行われていたワンピースのショーを大々的に展開していったのです。
そして、今では人気漫画「進撃の巨人」や人気アニメ「エヴァンゲリオン」、週刊少年ジャンプの作品とのコラボもおこなっています。
USJがどうなるのかというの楽しみです。
確かに「映画の専門店」と思っている人からするとUSJは迷走しているのでは?と思われることも
あったようですが、新しい戦略に基づいて着実に歩みを進めているというのが私の印象です。
何故ハリーポッターを誘致したのか?
では「何故ハリーポッターを誘致したのか?」が
気になる方も多いのではないでしょうか?
どうして450億円を投資してまでハリーポッターにこだわったのか?その答えも書籍の中にありました。
すぐに経年劣化してしまう中途半端な映画ブランド10個に毎年45億円ずつ投資するよりは、数年に一度、絶対に人気の衰えない強力なブランドに450億円投資したほうがよほど効率的です。
私自身、USJに携わる前からのハリー・ポッターファンで、家にはシリーズすべての本とDVDがあります。そのため、マーケターとしてだけでなく、1ファンの感覚値としてもブランド力には自信がありました。このレベルのブランドを使って集客施設を作れるチャンスは二度とない。
また、映画館でハリー・ポッターシリーズを観た人は累計約7800万人。これは、『インディ・ジョーンズ』も『スター・ウォーズ』も、ジブリ作品でさえもかなわない圧倒的な数字だ。
ハリーポッターシリーズの圧倒的なブランド力そして、そのブランドを使って集客するためのアトラクションが作れるという条件がそろったからこそチャレンジを決めたと語っています。
40億で寿命が短いアトラクションを10個作るよりも強力なブランドに投資を集中させるという戦略には
うなずけますが、リスクや反対も大きかったと思います。
圧倒的な話題性を持ち、長続きする大きなものに一点集中で投資をしたほうが絶対に効率がいい!というのがわかっていても、それに踏み切ることが出来た森岡氏はじめ、USJはさすがだといわざるを得ないのではないでしょうか?
ちなみに、アメリカにあるユニバーサルスタジオ オーランドにできたハリーポッターのエリアの成功を見てから、日本への誘致を決めたと勘違いされがちですが、実はそれも違っています。
まだオープンしたばかりのオーランドのハリーポッターを見て日本につれてくることを決意したのだそうです。
これの質を上げたものを日本に持ってくることができれば絶対に成功できると。
そして、そのために必要な投資金額を算出し、それまでの3年間をほぼ投資なしで乗り切った
のです。(詳細は書籍をご覧ください。)
ですので、これまでの3年間の間の戦略が外れていたら、USJにハリーポッターがこないどころか、倒産していた可能性もあったくらいの大きな賭けだったとも書籍の中で語っています。
成長のための3段ロケット!
もちろんUSJの成長はハリーポッターで終わりというわけではありません。
将来の戦略をこのように語っています。
1段目のロケットは、テーマパーク事業の最大のボリュームゾーンでありながら、USJの長年の弱点だった「家族連れ顧客(ファミリー)」を取り込むこと。
そこから生み出したキャッシュをテコにして打ち上げる2段目のロケットは、遠方からゲストを集客できる「ものすごい何か」を作ってかん再依存の集客構造から脱却すること。
そして更に大きなキャッシュをテコにしてより高く打ち上げる3段目のロケットは、科学的経営管理法に基づいてパークを効率的に運営するこの会社のノウハウを複数の場所に展開して、会社を大きく飛躍させていくこと。
さすがに書籍でも詳細は語られていませんでした。ですが、数年のうちにまた私たちを驚かせてくれるような何かを準備しているのではないかと私はわくわくしているファンの一人です。
人事を尽くして天命を待つ
こちらはUSJの戦略の本筋とは外れるかも知れませんが、書籍を読んで私が感じていることです。
書籍やインタビューの中でも本人が語っていることですが、森岡氏は絶えずUSJのことを考えていたといいます。
すると、夢の中に「反対向きに走るジェットコースター」が出てきたり、さまざまな事業のアイデアが出てきたといいます。
これもまた有名な話ですが、ソフトバンクの孫社長や、京セラの稲盛会長も、仮に現時点では出来ないことだとわかっていたとしても、まず「出来ます!」と答えてからその期限までにどうすれば出来るのかを考え抜くとインタビューや書籍の中で語っていました。
自分を追い込んではじめて、出来ないこともできるようになるのかもしれないな・・・。ということをこの本を読んで考えさせられました・・・。
まとめ
本当に読んで良かったと思える書籍の一つでした。
自分でビジネスをやっているものとして、DRMに関わるものとして、気づかされることが多かったです。
中でも、「徹底的に考え抜く姿勢」というのは一番見習うべきところかなと感じました。
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